今年(2022年)の梅雨明けは例年より早く6月末からの気温が予想よりも高くなったため、冷房による電力需要の伸びなどによる電力不足が見込まれました。加えて元々冬からの火力発電所の休廃止があり電力供給不足が予測されていました。そのため節電要請が出されました。

このときは天気が良かったので昼間は太陽光発電の出力が上がり昼間の電力需要の足しになりました。以前なら節電は昼間の暑い時間帯の冷房を節約することが多かったですが、太陽光発電のおかげで昼間は何とか賄えたので日没から夜にかけての緩い節電要望に変わりました。(熱中症を考慮して冷房以外を節約してくださいとのことだったので、身近な外食店などの冷房は寒いくらいに効いていたぐらいでした。)その後は、休停止中の火力発電所を再稼働することにより対応するとのことでした。

電力の安定供給とは、需要に合わせた供給であり、電力をたくさん使う時期・時間帯に合わせて出力をあげる必要があります。一般的には、夏の昼間は冷房需要で電力消費は増え、夜になると少なくなり、季節的には秋や春に電力消費が少なくなります。電力の「安定供給」には変動する需要に応じた十分な出力が必要で、需要が多いときに充分な電力を供給できるように発電しなければなりません。

発電には、火力(石油、石炭、天然ガス、バイオマス等)、水力、太陽光、地熱、潮力、風力、原子力・・・など様々が方法がありますが、それぞれの発電方法にはそれぞれの課題があります。

現状の技術で電力安定供給を重視するなら火力・水力が都合のよい発電方法と考えられます。
火力発電はある程度の出力調整ができ建設が比較的に容易なので安定供給には都合のよい発電技術です。しかし輸入エネルギー源に頼ることが多く円安でコスト高になる問題や、石油などの化石燃料は将来の枯渇問題、それに加えてC02放出などの問題があります。そのため国内でまかなえるエネルギー資源の開発や、バイオマス等の再生可能エネルギー源の開発が必要と思われます。バイオマス燃料の場合はC02は吸収と放出が相殺されるのでC02問題解決に向けた開発が期待されます。

水力発電は需要に応じて供給するには都合がよく、しかも、輸入の問題やCO2問題なども無く、その上、揚水型水力発電は水を逆に上げることによってエネルギーを蓄える機能もあり柔軟に対応できます。だたし、立地条件や自然環境破壊の問題など簡単に増やせない事情があります。

太陽光発電は、輸入エネルギー源に頼らず、将来の枯渇の心配も無く、コスト安でCO2問題もなく、特に夏の暑い時期の冷房需要を賄うには都合が良いですが、曇りや冬の場合は出力が弱いのが難点です。

地熱発電は、立地条件などの問題がありますが、火山地帯である日本にとっては注目すべき新しい技術だと思います。天候に左右されがちな太陽光発電や風力発電よりは出力が安定する利点があり、輸入エネルギー源に頼らずCO2問題等もないなどのメリットがあります。

潮力発電も、立地条件などの問題がありますが、輸入エネルギー源に頼らず、将来の枯渇の心配もなく、CO2問題もなく、海に囲まれた日本にとっては都合が良いと思われる発電方法です。

これらの新エネルギー・再生可能エネルギーは輸入エネルギー源に頼らず、将来の枯渇の心配もなく、CO2問題もなく、発電時エネルギー源のコストが安いものが多いです。

原子力発電は発電量が大きく出力一定ですが、安全面と核廃棄物と立地条件などの問題があります。
尚、一部の政治家やマスコミが「原子力発電は出力が一定だから安定供給できる」と間違えた解釈をしていることがありますが、需要に応じて出力を上げることができないのでは安定供給にはつながりません。出力一定の発電で電力を安定させるには、常に需要の最大に合わせて余裕をみて発電しなければならないので消費の少ないときにはエネルギーを無駄に垂れ流すことになってしまいます。
例えば、最大電力消費に見合った電力を仮に原子力発電のみで賄うとして必要な発電所数を試算してみます。仮に、原子力発電一基の出力が 1100MW として、最大消費時間帯の消費 182000MW として一割ぐらいの余裕を持たせるとすると、(182000MW * 1.1) / 1100MW = 182で、電力の安定供給には柏崎刈羽1号レベル(1100MW)の原子力発電182基も必要なことになります。現在停止中を含めて使用可能な原子力発電は33基なのであと149基分の新規の発電所を建設しなければならないことになります。安全性と立地条件と核廃棄物の処理についての問題をクリアして、あと149基分を新規に建設することは可能でしょうか?

電力の安定供給には蓄電機能の開発も必要です。
出力不安定な発電(太陽光・風力など)や、出力一定で無駄な電力を出す発電(原子力など)での余剰な電力を蓄積する必要があます。蓄電技術には前述の揚水型水力発電のように電力を位置エネルギーなどに変換する方式や、バッテリーのように電磁気学的に蓄電する技術があります。規模やコストが今後の課題ではないかと思います。

単純に電力の「安定供給」だけを求めるなら火力発電所を増設すれば良いのですが、環境問題などを考慮すると様々な方面で新しいエネルギー技術開発を継続する必要があると思います。

 

参考URL
①原子力発電一基あたりの出力の参考:一般社団法人 原子力安全推進協会
https://www.genanshin.jp/db/fm/plantstatusN.php?x=d
本日の運転状況(2022/08/20)
運転中(発電中):7基 停止中:26基
東京電力 柏崎刈羽1号 定額出力 1,100MW 第16回定検停止中 (2011.08.06〜)

②消費電力の参考:電気事業連合会
https://www.fepc.or.jp/enterprise/jigyou/japan/index.html
日本の電力消費の山と谷
http://www.ene100.jp/www/wp-content/uploads/zumen/1-2-10.jpg
このフラフの範囲では2001/7/24 の15時で182x百万kW(182000MW) が最大です。

(2022/08/21 文責 Shin Onda ※この文章は Shin Onda 個人の見解に基づいて書かれたものです。)